超・お手軽

system72 シリーズ
LM1875/675 Power AMP
 
 
TV/RegzaのDLNA経由で、PCに保存した音楽を聞いているのですが TVの内蔵スピーカ&アンプの質は劣悪なので、もう少し ましな音が出るよう 外付けアンプ と スピーカを使用していますが、TV周りに普通サイズのオーディオアンプは不似合いです。  (DLNAの話はこちら

今回は、PCM1796/DACに組み合わせて小型ケースに入れて使う、お手軽パワーアンプを設計します。  パワーアンプは、自作派のオーディオ界では メインストリームですから いろんな 出力デバイスや 回路方式があります。 並み居る候補から 最もシンプル・お手軽と思われる、LM1875を使用することにしました。  (個人的にD級よりB級が好み)

LM1875は、電源を±30V確保した場合、30W/8Ω 得られますで 当初の目的・目標からいうと オーバースペック過ぎるのですが、DAC用の電源と共通で使える耐圧±25V以上という縛りから候補として上がってきました。 また シンプルな外付け回路という点もぴったりです。

さらに LM1875には回路がほぼ同等な LM675 という パワーオペアンプも存在します。 こちらはアイドリング電流が、Typ.で 18mA(1875は70mA) と小さいので小型ヒートシンクでも良さそう ・ ・ ・ 。

  ◆電源電圧を±20Vとしたときの、アイドリング時消費電力は
    LM1875 : 65mA x 40V = 2.6W
    LM675  : 18mA x 40V = 0.72W


つまり、LM1875では、出力無しでもステレオ/2chで5.2W消費しますから、小型の電源トランスや小型のヒートシンクでは無理がありそうですが、LM675なら1.44W程度ですから DAC用に使っている 15VA 程度の容量のトランスでも 「使用可能範囲にありそうだ」 ということが 想像できます。


基板サイズを [72x47] サイズに限定しましたので、ヒートシンクサイズも極端にケチったサイズで使用します。 LM1875/675は 熱保護回路が内蔵されてますので それが働かない範囲で 「無理やり使おう」 「外れたら内蔵保護回路で保護してね」 という 掟破りのアンプです。


   はめを外して 大いに遊んでみましょう 〜 !! 

ということですので、まともなアンプをご希望の方には全く不向きです。 ご注意ください。



      <小型放熱器の例>
         

秋月扱いの小型放熱器の例です。
左から 46x25x17 (11.9℃/W)、 15x25x11 (37.9℃/W)、
      24x17x25 (20.3℃/W)、  20x25x20 (15.8℃/W)、 端面が切りっぱなし・・・。
右端が電源基板type-STDで使ってる、水谷電機の PUH16-25 (22.2℃/W) です。
水谷製は、ヒートシンクの端面にもアルマイト処理がなされてる、ちょっとだけ高級品。


パワーアンプや電源等、熱設計を行う所で使う放熱器は、熱抵抗が明確なものを使います。

今回のLM1785/675パワーアンプ基板では、system72サイズの基板でギリギリ使える 左から 4番目の、20x25x20(15.8℃/W) の 放熱器を使う前提で基板設計します。 





パワーアンプ回路選定のおさらい  
 1  基板サイズはsystem72準拠   47 x 72 で基板化可能であること 
 2  DAC電源と共用できること   耐圧±25V以上、アイドリング25mA/ch以下
 3  小型ヒートシンクで実用になること  無信号時消費電力 ヒートシンク熱抵抗以下 
 4  平均出力電力    100mW/ 8Ω以上  
結論: LM1875 または LM675  


LM1875 リードフォーミング形状

使いにくそうな足ですが TO220で5本足ですから やむを得ず。
放熱タブは、Vee(3pin)と同電位。 ヒートシンクもVeeになるので
要注意!!です。 (絶縁しません〜)


【出力電力の確認】 

パワーICが決まりましたので、小型ヒートシンク(15.8℃/W)で どの程度の出力が
得られるか概算ですが計算してみます。

   LM1875の熱関連スペックは
     ・Tj_max = 150℃
     ・θjc = 3℃/W
     ・Tja = 73℃/W (単品時)
     
   動作条件を
     ・電源電圧 DC20V(±20V)
     ・周囲温度Ta = 50℃
     ・接触部熱抵抗 = 1℃/W (グリス塗布/マイカ無し)  ←Veeが放熱器に出ます!

とすると、今回のヒートシンク付き LM1875/675 の許容損失 Pdは
    ・Pd = (150℃-50℃) / (15.8+3+1) = 5.05W  となります。

B級PPでの理論効率(π/4)から一般式として次式が得られます。
   ・ ((W x R)^0.5 x 1.41 / V) x (π / 4)

 V=±20V、 R=8Ω を式に代入し、アイドリング時の消費電力を加えて計算します。
この結果を、グラフを書いてみたのが下図(右)です。 LM1875のデータシートのデータ(左)と比べると、結構近い線で計算出来てます。

許容損失 5.05Wの時の それぞれの 出力は、

   ・LM1875 で 170mW/8Ω
 /片ch
   ・LM675 で  600mW/8Ω 
/片ch

が、連続して得られる出力(平均出力)という計算になります。


 






【音圧レベルは確保できるか】

一般的なシーンでの音の大きさ・音圧レベルですが
  ・普通の会話  50〜60dB
  ・TV        60dB
  ・ステレオ    70dB

程度とされてますので、試聴位置で 60dB〜70dB 得られれば OKといえそうです。

試聴位置が、スピーカから 3m、使用するスピーカを FOSTEX/FE103クラスとしたとき、能率は 89dB/Wですから 3mの位置で得られる音圧レベルは、それぞれ

  ・LM1875 で 170mW/8Ω => 71.8dB  /片ch
  ・LM675 で 600mW/8Ω => 77.2dB
    /片ch


とりあえずの必要な音圧を得るためのパワーは 「確保出来ている」 という結論になりました。 瞬間的なパワーは、発熱的に問題無いと考えれば、電源電圧20V(±20V)で、瞬間的に 17W相当の出力が得られるはずですので、クリッピング感の無い 広い Dレンジの音が期待できる  ・ ・ ・ ・ ・ と 「狸の皮算用」 です。









さて、                                .
電源電圧を少し下げると 連続的に出せる出力が増します。
今回の放熱器での 電源電圧の最適値を計算して見ました。


アイドリング時の消費電力も含めて損失が5.05W以下で得られる
8Ω負荷時の最大出力をグラフ化したものが下図です。 

・LM1875の場合、±9.8Vの時 2.4W
・LM675の場合、 ±13Vの時、4.3W
の出力が得られる電源電圧値となります。

新たに電源トランスを選択して電源を作る場合
±10V 〜 ±12V 程度で作ると良さそうです。









くどくどと 熱設計に関する ウンチクを述べましたが
最終手段として 強制空冷 があります。

写真のような 【 可愛い 】 ファンも ありますので
これを 使うのも 手ですが、どの程度の効果が
得られるかは、試してみての お楽しみ ・ ・ ・ ・ ・

















【参考回路図】

回路はものすごくシンプルなので、NSの 「模範回路から外れようが無い」 と思います。




基板のレイアウトです

 35V2200 または 25V3300 の電解コンデンサが
積める  スペースを 確保しています。


【半田面側】

アナログ回路は、アースパターンが命ですから、ブロック毎に分離されてます。
出力コネクタ部へは、リード線で直接配線可能なように半田ジャンパで
分離できるよう 配慮もしています。


【部品面側】


ヒートシンクは絶縁しませんので下側にパターンが来ないよう配慮してます。







基板のAssy例

47x72 基板に Lch/Rch 載ってます。
瞬間的には、30W x 2 出力も可能なICを
積んでますが 可愛い手のひらサイズです。








基板は system72準拠 です。  system72とは


ヒートシンク と 電解の高さは 25o に収まっています。







温度試験の風景
(以下の測定は、LM675版です)

温度センサはヒートシンク上部にビス止め。
30o角ファンで空冷してます。





温度上昇試験の実測データ

今回のヒートシンクでは、0.5W出力時に約50degの温度上昇があります。 
どうやら自然冷却の場合、このあたりが限界のようです。 

一方、30o角のファンをヒートシンクから約4p離した位置で
廻した(送風)ところ、約30℃の温度低下がありました。 


すごい効果です。 強制空冷は伊達じゃない。



                                                                      Vs=±15.9V


ファンが回っていれば、10W/8Ω出力もクリアします。
12W出力では損失が減るので温度が下がります。
(温度保護回路が働かない、温度上昇50deg以下が目標

12W時にファンを止めると、86℃ぐらいまで上昇します。






                                                                 Vs=±15.9V


強制空冷なら、30o角のファンでフルパワー 行けそう です。

ファンが小さいので12Vでも、それほ どうるさくはないのですが、
音響機器としては、騒音対策として電圧を少し落とし (10V位?)
回転数を下げたうえで、2〜3個並べて 廻すのが良さそうです。




一般的な使用条件での温度上昇確認


普通に音楽を聴く音量での出力です。

Anett Lousan [電話交換の女]


実効値 137mV/8Ω ですから 150mW 位出しているようです。


この使用状態時のヒートシンク温度です。 ファン無し






バックグランドで音楽を流す時のレベルに音量を絞りました。
まだ少し高めですが、目安。

Keeth Jarrett  [The Keln Concert]  イントロ部


実効値 22mV/8Ω ですから 3.9mW 位しか出してないようです。



実際には、本を読む場合のバックグランドミュージックとしては
もっと音量を絞りますから、かなり小さい出力で間に合って
しまうようです。

どうやら普段使いの音量は 強制空冷無しで カバー出来る
出力(音量)で 十分 間に合うようです。



ファンで強制冷却すれば、10Wx2 も可能な つぶしの効く
小型アンプ基板を お探しの方は、是非 ご検討を




近日、発売 !!  発売中



     ◆ なんちゃって ケース

    ・ 155 x117 x 38 のプラスチックケースに 電源基板(tiny) と 電源トランス 一緒に収納も。

     キットは そんな ぴったりサイズの ケースに収納して 発送予定です。
     
                                    ・電源基板 と 電源トランスは 付属しません
 


  補 足


熱設計上は小型ヒートシンクを使う関係で LM675 の方が有利ですが、実は

  ・LM1875 はオーディオ・パワーアンプ用
 (音を気にしている ・ ・ ・
  ・LM675 はサーボ・アンプ等 制御用 (音を気にしていない・ ・ ・

と用途が 異なる設計となっています。  
Datasheetに載っているデータを見る限りでは あまり差異が無く どちらでも良さそうに思えます。


( ICの内部設計が異なっています。 詳細は datasheetの等価回路参照下さい。 書き方の違いで 一見かなり違うようにも見えますが バイアス関係のみの違いのようです )



そこで、色々測定してみたところ、 IC の性能 ・ 性格 の違いが 顕著に表れるのは 「周波数vs歪み特性」 のようです。 分かってしまうとあたりまえの事のようにも思えるのですが、それは結果論。


この特性 (下図) を見ると、


出来たら LM1875 を使いたいな 〜
    ・
    ・
    ・
やっぱり LM1875 を使うしかないかな 〜 


というのが 率直な 感想でしょうか。














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